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2011年3月28日 (月)

法人成立時の所有権移転登記の登記原因

1.認可地縁団体への所有権移転登記が実現した背景
 町内会や自治会等の地縁による団体のうち所定の条件を満たすものは地方自治法260条の2の規定に基づき、市町村長の認可を受け、その規約に定める目的の範囲内において権利を有し、義務を負う、すなわち法人格を取得することが認められている(このように法人格を取得した地縁による団体を以下認可地縁団体とよぶ)。ところで法人格を取得していなくても全国に無数にある町内会や自治会の多くは、いわゆる権利能力のない社団の実体を備えている。しかし、登記制度上権利能力のない社団は社団の名で登記をすることが従来から認められていない。そのため町内会等が活動の拠点として町会事務所、集会所などの不動産を所有していても、会長個人名または役員数名の名で登記する他に方法がない。そして、団体名でなく個人名で登記をすると、登記上は個人財産と団体の財産との区別がつかず、従来から様々な弊害や不便が生じていた。そこで平成3年に、地方自治法が改正され、町内会等にも法人格を取得する途が開かれた。この法改正を契機として、全国各地の町内会や自治会が認可地縁団体となって町会事務所等の不動産を会長等の個人名義か団体固有の名義に変更することが可能となった。

2.権利能力のない社団の代表者の変更の場合の登記原因
 認可地縁団体制度ができるまでは、会長など代表者の交代の際の登記は、旧代表者から新代表者へ所有権移転登記の手続きをすべきであるとされ、所有権移転登記の内容の一部をなす原因すなわち旧代表者から新代表者へ所有権が移転した原因としては、委任の終了と表示すべきであるというのが法務省の見解である(昭和41年4月18日民甲第1126号民事局長回答)。これは会長名で登記をするということは、不動産の実質的所有者である団体構成員が会長等に対して登記名義人となって、固定資産税の納付その他不動産所有者としてなすべき各種の事務処理を委任することを意味すると解釈したのであろう。すなわち地縁による団体の構成員と登記名義人との間に一種の委任契約が成立しているというのである。そしてA名義にせよB名義にせよ当該不動産は個人の資産ではないにも拘わらず、登記上は所有者の表示としてAまたはBの住所と氏名のみを記録され、○町町会長Aというような肩書きを付けることさえ認められなかったため、前記の弊害が引き起こされたのである。
 ところで、一般論としても委任の終了という表現は所有権移転登記の原因として適切であるかどうかは疑わしい。例えば名義を旧代表者Aから新代表者Bに変更した場合、Aについては委任の終了がそのまま当てはまるとしても、Bについてはいかなる理由でで登記の名義人になったのかを何も説明していないからである。委任の終了よりは、むしろ端的に受任者の変更とするほうが実体に即している。この点は、権利能力のない社団の形態をとる団体一般に共通する問題点である。

3.認可地縁団体への所有権移転登記の登記原因
 それでは認可地縁団体が従来の代表者名義の不動産を団体名義に変更する場合の登記原因はどのように表現すべきか。法務省の公式見解はこの場合もまた、委任の終了とすべしとする(平成3年4月2日民3第2246号民事局長通達)。
 その理由は代表者の交代の場合と同様団体と旧代表者との間の委任関係が終了するという点で共通であることを挙げている。(「登記研究」の521号の先例解説)。しかし従来構成員の共有財産であった不動産を、構成員とは独立した法人格をもつ認可地縁団体に移転するのであるから、登記原因を委任の終了とするのは町内会長の交代の場合と同様新登記名義人の権利取得の原因を示していない不適切な用語である。構成員は法人化後の団体の活動の物的基礎として各自の共有持分を拠出するのであり、団体の活動に必要な財産を提供する際に一般的に用いられる出資という語がふさわしい。なお地方自治法は認可地縁団体の規約に「資産に関する事項」を盛り込むことを義務づけているが(地方自治法260条の2第3項8号)資産の調達管理の方法は各団体の規約に委ねられており、同法には出資の語が特に用いられているわけではないい。また登記原因を出資と表示すると、旧代表者の単独所有資産が法人に提供されたような外観を呈することになるという難点もあるが、これは登記上の前所有者の所有権取得時の登記原因を調べれば解決する問題である。

4.特定非営利活動法人が設立された場合の取扱い
 地縁による団体の法人化と類似する問題が平10年に成立した特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人(以下NPO法人とよぶ)への所有権移転登記の際にも生じる。長期間にわたり特定非営利活動を行ってきた団体が所定の手続きを踏んで法人格を取得した際、その団体の構成員が所有していた不動産は、やはり権利能力のない社団一般の例にもれず、代表者個人名義で登記されることが多かったと思われるが、法人化を契機として当該不動産をNPO法人固有の名義に変更することが可能となった。その場合の所有権移転登の記原因について法務省の非公式見解(登記研究6146号カウンター相談102)は、認可地縁団体の例と異なり出資とすべきであるという。特定非営利活動法人はそれを設立しようとする者の法人設立行為によって新たに法人が成立するものであるから実質的な所有権移転が生じていることがその理由であるという。認可地縁団体については法人化しても団体としての同一性は失われず、実質的な所有権移転は生じないのに対して、NPO法人の場合は実質的な所有権が移転すると解釈する根拠は明らかでないが、NPO法人の場合は既存の団体が法人化する事例ばかりではなく、全く新たに作られることも少なくない点は認可地縁団体と明瞭に異なるところである。いずれにせよ従前の個人資産がNPO法人の財産的基礎として提供されるのであるから、登記原因として出資の語は適当な表現といってよい。認可地縁団体と同様にNPO法人も資産の調達管理の方法は全て定款の中で「資産に関する事項」として定めることになっており(同法11条1項8号)、全て法人の自治に委ねられている。この点は出資や現物出資の定義を条文で明確に定め、資金調達方法や資産の管理について厳格に規制が設けられている株式会社の場合とは大いに異なる。
 なお、上記カウンター相談の解説中、NPO法人設立後に従前の団体構成員が同法人の社員となる際に、法人に対して事業用不動産の全部または共有持分を無償で譲渡するときは、登記原因を贈与としているのは妥当であろうか。NPO法人の活動に供することを目的としてする譲渡は、やはり出資と表記すべきものと考える。財産の移転時期が法人成立時かその後であるかにより区別する理由はないからである。

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